HOME >  2014年11月

2014年11月

ある一人の日本人の若者が書いた本が世界20カ国以上で翻訳され、ベストセラーになっていることをご存知でしょうか?彼の名は東田直樹さん。海外では村上春樹か東田直樹かとまで言われているとか。本のタイトルは、The Reason I Jump(『自閉症の僕が飛び跳ねる理由』)。直樹さんは自閉症です。その彼が13歳の時に自身の胸の内を綴った本ですが、7年を経て、自閉症の息子を持つアイルランドの作家ミッチェルさんの目にとまり翻訳されました。息子とコミュニケーションがとれずに苦慮していたミッチェルさんですが、本書に出会って希望の灯を見出していきます。二人の交流を追ったNHKのドキュメンタリー番組「君が僕の息子について教えてくれたこと」の中で、ミッチェルさんが「私は父親として息子に何をしてやったらいいか」と尋ねるシーンがあります。直樹さんの答えは「今のあなたのままでいい。いつも笑顔でいて欲しい」。自閉症の自分がいることで、親や家族がつらく暗い気持ちでいることほど切ないことはないからと。親はいつも笑顔でいて欲しい。自分の存在をあるがままに受け入れて欲しいという直樹さんの言葉は、障がいの有無を超えてすべての子どもの願いでもあることを考えさせられます。

施設長 大日向雅美