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2015年8月

この5月にフィンランドの子育て支援を視察していらした浦安の松崎市長のお話を先日、伺う機会がありました。フィンランドといえば、妊娠中から担当保健師らが寄り添って、出産・子育てまで切れ目なく支援する「ネウボラ」が注目されています。しかし、市長のお話で興味深かったのはフィンランドの教育システムでした。就学前から小学校・中学・高校・大学へと進学する道筋は日本と類似しているのですが、どの段階でも「留年」が公然と認められ、当然視されているとのことです。よく理解できない科目等があったら、進級しないで元の級に戻って、納得するまで学ぶとか。日本は「留年」は進級できないという負のイメージが付随していますから、仮に教科がわからなくても進級だけさせるという事例も少なくありません。義務教育で当然身につけておくべき学力がない学生も増えていて、「リメディアル教育」(補修教育)の実施を検討する大学も少なくないのが現状です。一方、フィンランドでは大学生は30歳までが当たり前。社会人として就職してから大学に入学するなど、生涯を通してゆっくり学ぶ仕組みが整備されているからです。私たちは「その子らしく、ゆっくり育つことが大切」と言葉では言いますが、それをシステムとして具体化する必要性を、市長のお話から考えさせられたことでした。

施設長 大日向雅美