2015年12月
もしも、自分の命が残り少ないと知ったら、あなたは子どもに何を残せますか? こんな質問をすること自体ためらわれますが、実際、そういう事態に立ち至った一人の母親がいました。乳がんを宣告された時、最愛の一人娘はまだ5歳。どんなに切なかったことかと思いますが、彼女は現実に懸命に立ち向かいました。闘病の日々の中で、鰹節を削るところから、本格的なお味噌汁の作り方を教えたのです。「ちゃんと作る・ちゃんと食べる」ことを伝えたい。自分がいなくなっても娘が健やかに暮らしていけるようと、祈りを込めた贈り物だったのです。このエピソードは「はなちゃんのみそ汁」として小学校の教科書やテレビドラマに。そして、いよいよ来春、映画化(住友生命の特別協賛)されます。同社の社員で、同じ年頃の娘を持つ女性の働きかけが実っての映画化で、広末涼子さんが母親役を演じています。はなちゃんは今、12歳。おみそ汁を作っている時はママがそばにいてくれるみたいと語りながら、毎朝、おいしいお味噌汁を作ってお父様と一緒に朝の食卓についています。お母様の祈りは、はなちゃんの中で確かに生き続けているのです。与えられた命の長さは人によって異なりますし、私たちはその限りをなかなか知ることはできません。だからこそ、一日一日を丁寧に振り返りつつ過ごしたいと思います。大切な人を心から愛するために。
施設長 大日向雅美